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本邦初のアメリカ野球人名事典
日本初の本格的大リーグ人名辞典として発行された本書。

投打各部門のタイトル保持者、歴代ＭＶＰ選手、本書独自の基準を満たした選手など総勢2500人以上が項目として掲載されている。アメリカの記録集『トータル・ベースボール』の他、日米のアメリカ野球関連の書物を丹念にあたって項目の充実を図っている。

「人名事典」という企画は、これまでの人物伝主体の日本の大リーグ書物の中では画期的な試みといえる。

だが、項目にあげられている人物の記述に統一性がなく、内容に軽重の差が出来てしまっているのは、銘々伝の色を強く残している。また、選手中心の項目立てとなっているため、コミッショナーやオーナー、審判、ブロードキャスターなどの項目が極端に乏しくなっており、本書が本格的事典を志向するなら、物足りなさを覚える読者もいることだろう。

野球は数字（記録）のスポーツ
　退屈な数字の羅列ではなく、数字から導き出される野球の本質を思う存分堪能できる素晴らしい一冊。日米の野球博物館に保存されるべきだと思う。

　また読み物としてだけではなく、野球界に対する至言も随所にちりばめられている。例えば観客動員数について、現在では「満員=5万人」と安易な発表がされているが、復興間もない頃は実動員数がきちんと発表されていた。其の頃できたことが今何故できないのか？という具合だ。

　昨今トップレベルの選手が次々メジャーリーグに挑戦することで日本プロ野球界が衰退しかねぬ、と経営サイドから悲鳴が上がっている。しかし長年経営努力もせずに安易に人気に頼ってきた経営サイドには、本書をかつ目して読み、まず野球の本質をしっかりと見極めることからお勧めしたい。

野球の歴史を学びたい人へ
　本書は歴史あるわが国のプロ野球が始まってからの選手、監督が網羅された辞書である。その選手の打率、本塁打等のデータから、面白いエピソードまで、余すことなく記載されており、単に人名を調べる辞書としてだけでなく、読み物としても十分に耐えうるできばえとなっている。

　にわかではない真のプロ野球ファン、プロ野球の観戦をかかさない人、最近プロ野球の歴史に興味を持った人等にお勧めできる一冊である。